加算器式プリアンプ
選別した個別部品を用いて加算器式プリアンプを組み立て,24時間365日通電モードで使うようになってから,
かなりの年数が経過しました。
この間何の故障もせずこれといった不満も見あたらないのですが,
半導体製造技術の進歩を実感するべくさらには中身の増えてきた部品棚の整理も兼ねて,
FET入力オペアンプを使った同じ形式のプリアンプを製作してみることにしました。
自作した(2入力)加算器式プリアンプの回路構成は概略以下に示した回路図のようなもので,
入力抵抗は250kΩそして最大利得は20dBといったところが主な仕様になります。
そこで先ず,
上記回路に基づく試作を行い,これを参考にして機能とかデザインについて簡単な確認作業をしておきます。
この試作プリアンプでは,初段の負帰還回路抵抗値を半分にすることで利得を約6dB落とせるよう,
利得切り替えスイッチを入力選択スイッチの側に加えてあります。
これにより,
最大入力電圧を正弦波で約20Vrmsに上げて入力回路の飽和対策も兼ねるようにし,
スピーカ特性測定時などのキャリブレーション作業にも使えるようにしてみました。
ですが,現実には過大な入力信号の加わることは無さそうでしたので,この機能は試作品止まりとしておくことにします。
なお木製ケース(W357*H95*D245)に関しては,ワトコ・オイルを塗っておいてから日光にさらすことにより,見え方とか色のバランスがどうなっていくのかといったことも確認しておきます。
ここで示しているような加算器方式のプリアンプを制作し使うようになってからは,
接続している装置個々の出力レベルを適正範囲に納めるようにしている場合,
入力切り替えすること無しに例えばLPとかCDといった音源をシームレスに楽しむことができることから,とても快適かつ便利そしてこれが当たり前のようにすら思えて来るようです。
今回は,どうせ同じ形式のものを自作するのならばと,取り付ける部品点数が増えたとしても漏れ電流の増えそうにない,
熱にも強いスタンド・オフ絶縁端子を用いて信号増幅部を組んでみることにしてみました。
こうすることにより,プリント基板を用いた場合とは異なり,随分と雰囲気の違うプリアンプになることも期待できそうです。
以下には,最近入手した金属箔抵抗器(アキシャル型)などを用いた,この加算器方式プリアンプ製作の様子をメモ代わりに記してあります。
増幅回路本体は,適当な大きさのアルミ板に穴を開け,絶縁端子とICソケットを取り付けて回路基盤としてから,これの上に組み立てることにします。
このような組み立て方にすると配線が立体交差しても何ら問題とはなりません。
また,表側に部品を配置し配線の殆どを裏側にて行うプリント基板とは異なり,
部品の寸法に多少は気を配ることを別にして,全てを表側から回路図そのままに配置・配線できることから,以降の動作確認・メインテナンス作業も簡単になりそうです。
この製作例では,
スタンド・オフ絶縁端子の寸法からくる制約により,回路基盤上に配置する端子間の間隔を最小で5ミリまでしか狭めることができませんでしたが,
点検時など,回路図との対比が容易にできるように配慮してみました。
また,端子ひとつに接続する部品点数を多くしても問題とはならないことから,回路基盤上の端子数は考えていたよりも少なくて済みました。
一方,手軽に使えるようにすることも大事なので,小型トロイダルコア・トランスを使い,内蔵できる規模の正負各15Vの直流安定化電源を組み立てることにします。
そしてこの直流電源は,3端子レギュレータによる+15Vの安定化電源ふたつを重ね合わせることで構成することとします。
このような構成にすると,アースの基準点をプリアンプ回路本体側に持って行くことが容易となるようです。
さらに,動作の安定したエミッタ出力3端子レギュレータだけを用いて正負電源を構成すると,
電源バイパスコンデンサ選択の自由度が高くなるのも利点のひとつと考えられます。
なので,電源トランス2次側の2巻き線それぞれにシリコン・ブリッジ・ダイオードを配し,
その出力を先ずはプリント基板裏側に取り付けた小容量ソリッド・タンタル・コンデンサ(35V33μF)に接続して,
これによりほぼ平滑になった脈流をシリコン・ダイオードを通してプリント基板表側の大容量コンデンサに導いてさらに平滑にし,
最後に正出力3端子レギュレータを経由することで,安定化したプラス15Vを得ています。
これは,ミューティング用リレイの電源を小容量コンデンサ側から供給することにより,
電源オフ時にプリアンプ出力を素早く切るためでもあります。
オペアンプ用ソケットは,プラスチック・ネジなどを用いて加工をし,端子の高さに合うよう回路基盤から少し浮かせて取り付けるようにしました。
加工をしたソケットおよび使用したものと類似のスタンドオフ端子と,絶縁テストをするべくリード線を半田付けしたガラスエポキシ穴あきプリント基板の様子は以下の通りです。
プリアンプ内蔵電源は,信号回路と比較し端子ひとつ分に半田付けする部品点数の少ないことからも,微少漏れ電流が性能に影響するような問題とはならないと考え,
スタンドオフ端子を使用するのは止めて,
汎用の穴あきガラスエポキシ基板を用いて組み立てることにしました。
これは,使用したガラスエポキシ穴あきプリント基板もスタンド・オフ端子もともに,
部品取付前の漏れ電流は印加電圧100VDCにてコンマ数ピコ・アンペア以下に収まっており大きな差が見出せなかったものの,
ひとつの端子に繋ぐことのできる部品点数や配線の本数に大きな差の出ること,および絶縁の安定性が同じではないことを考慮したためでもあります。
このプリアンプは使用している部品の少ないことから,内蔵電源を先に完成させ,製作途中の各段階で簡単な回路の動作チェックをしながら順次組み立てることにより,
初歩的なトラブルによる被害の出ることが無いよう工夫してみました。
このような動作チェックには,電池式のデジタル・ボルト・メータを使うのが簡単・便利のようでした
(ノイズ・レベルの低いTR6853を愛用しています・・・古いタイプなので連続だと単2電池4個で丸1日程しか動いてくれません)。
プリアンプの入力端子は3系統用意し,その内のひとつは2入力加算回路の一方に常時接続しておきます。
この2入力加算器回路の出力をアッテネータ(Shallco製10kオーム)を経由して利得20dBの出力バッファ回路へと持って行きます。
出力端子はふたつにし,増幅回路本体との間にはリレイを挟み,それぞれ50オーム程度の抵抗を通して出力を供給するようにしました。
ここ最近の使い方に従うとすれば,常時接続の入力端子にはイコライザを内蔵したLPレコードプレーヤ(ガラード301グリース+SME3009V+DECCA4)を,
入力切り替えスィッチ経由ではCDプレーヤ(CDP−X5000少しだけ手入れ)かLPレコードプレーヤ(イコライザ内蔵,
TD124U+SME3009V+V15V/フェアチャイルド 412−1A+282+225A)を接続し,
これらを入力切り替え無しにして楽しむということになりそうです。
製作途中のケース内部の様子です。
市販金属ケース(W23cm×H7cm×D20cm)内部に見えているのは,
底面の7割程を埋めるように渡したアルミ・シャーシ上に配置した電源回路(穴あきガラスエポキシ基板)とプリアンプ本体とも言える回路基盤(アルミ板),
最も大きい部品でもあるアッテネータ(10kΩ),入力切り替えスィッチと出力ミューティング用リレイなどです。
このミューティング用リレイは,省エネかつハーメチックシール型でもあることから,
コイル加熱に伴う蒸散物質とか酸化による接点の接触不良といった,寿命の問題は考えなくても良さそうです。
組み立ての完了した増幅回路の様子です。
使用した抵抗のリード線の径と,配線の太さとが上手くバランスしているように思えるのは気の所為でしょうが,
裏返すことなく点検できることから,
調整とか交換そして修理はプリント基板を用いた場合よりもかなり簡単になるものと思います。
ところで,負帰還回路に使っている抵抗は全て部品棚にため込んでいた金属箔抵抗器ですが,
在るべき場所にそれらしく収まっているような気がしてきて,眺める度に一人悦に入っているような次第です。
特に加算器用の抵抗(250kΩ)には,同形式のプリアンプを試作した際に印象の良かった,
とっておきのノン・トリミング・タイプ金属箔抵抗器を使用しております。
アナログ加算器では,入力抵抗と負帰還抵抗に同じ信号電流を流すことによりオペレーショナル・アンプ負入力側の電位をゼロにして,
信号電流がアンプ入力段には一切流れ込まないような演算動作をします。
このため,加算回路に用いる抵抗はできる限り同じ特性でなくてはなりません。
しかし一般に抵抗器というものは,抵抗値が10kΩを超える辺りから,
例えば1kHz以上の周波数になると誘導性および容量性の振る舞いをするようになり,
周波数により特性の変動する現象が出てきます。
なので,高抵抗値であることからも,
交流動作でのばらつきはトリミング・タイプよりもさらに少ないはずと,このようなノン・トリミング金属箔抵抗を使うことにした次第です。
ちなみに現役のプリアンプでは,
この交流動作ができるだけ揃うようにと,多摩電気製の同一ロットSF型金属被膜抵抗器(100kΩ)を加算回路に使っております。
このSF型は,通常のMF型金属皮膜抵抗がモールド型であるのに対して,MF型抵抗と外観の似たケース内に抵抗素子を納めて封をしたような丁寧な作りをしています。
今回は,どうせ同じ形式のプリアンプを組み立てるならばと,入力抵抗値をできるだけ大きくするべく,
抵抗素子の構造がより精密に管理されていることから交流特性の良く揃うであろうこのような高抵抗値の金属箔抵抗を入手し使うことにしました。
ミューティング回路とかパイロットランプ(LED)点灯回路を組み込んだ内蔵電源をシャーシに固定し,
(2入力)加算回路本体と増幅器の動作確認を済ませてから,入出力信号線の引き回しと結線作業に移ります。
この段階で完了しているのは,出力回路とそれの入力側アッテネータとの配線までです。
組み立て作業で残っているのは,出力回路オペアンプの動作確認をしてからですが,加算器回路側の入力信号線の配線をするだけとなりました。
入力回路の配線の引き回しも完了しました。
ここまで来ると,残っている主な作業内容としては,全般的な動作チェックをするだけということになります。
部品棚から取り出したFET入力オペアンプAD711をソケット全部に差し込み,わくわくしながらのスィッチ・オンです。
通電直後の簡単な動作チェックによれば,出力オフセットDC電圧はコンマ数ミリボルト程度,
プリアンプ出力の残留雑音は測定周波数帯域300kHzで91μVrms,帯域30kHzだと31μVrms,
聴感補正をした場合には21μVrmsといったところに収まりました。
最大出力は約10Vrmsなので,一般的な表現によるSNRは110dB以上を確保したということになります。
残留ノイズの大部分は3端子レギュレータに由来しているもののような気がしておりますが,
これとは別に想定外の線スペクトルが含まれていないことを,スペアナにより確認しておくと安心です。
このノイズ成分ですが,周波数帯域との対応関係も素直であり耳に付くような大きさでは無かったことから,実用上は問題とならない低レベルにあると考えられます。
ところで,製作したプリアンプの入力回路ふたつの内ひとつは,
入力切り替えスィッチを通さず,直接入力用RCAコネクタへと配線してあります。
これは,信号経路を単純にしておくというだけでなく,常時扱う入力信号は常時接続しておくのが便利だからでもあります。
長らく現役を勤めてくれているプリアンプと置き換えて比較試聴した印象ですが,
両プリアンプ間の個性が良く出ているような音の差が聞き取れて興味津々でした。
個別部品を選び組み立てた現役の(6入力)加算器型プリアンプがくっきりとした音を聴かせてくれるのに対して,
この新しい(2入力)加算器型プリアンプはふっくらとした緻密な感じの音がするというのが第一印象ということになります。
アッテネータの操作感も上々で,飾っておくだけでは勿体ないような気がしてきます。
この電源内蔵型プリアンプは,消費電力が1.2VA程度であることから,木のケースを製作しその中に納めて使うことにします。
取り敢えず完成したというだけなので,もう少し時間をおいてから特性確認をしたり細かな調整をすることになりますが,
最近のオペアンプは内部トリミングをしてあるお陰でか,このまま使っても特に不満は出て来そうにありません。
また,ソケットを利用していることから,オフセットDC電圧レベルのチェックこそ欠かせないものの,手持ちのICと差し替えて音色の違いを楽しむこともできます。
この辺りのことも含めて,増幅回路を個別部品で組み立てていた頃と比較し,技術の進歩のお陰でか,随分と作り易くなったものです。
木のケースは桐の集成材を用いて適当に作ったもので,
断面が長方形の桐の桟を後ろからはめ込むことにより中の金属ケースを固定するようにしています。
外形寸法は幅25.5cm×高9.5cm×奥行22.5cm(直線部)ですが,背面側に向かうにつれ曲面部を広くなるようにしたこともあって,金属ケースむき出しの時の堅い感じと比較し少しホンワカとした柔らかな印象になりました。
できあがったばかりということもありこのままだと白っぽいことから,汚れが着かないうちに簡単なオイル仕上げ程度はしておこうかと考えているところです。