スピーカケーブルの作り方
リッツ線を意識・指向したスピーカ・ケーブルの簡単な作り方を紹介します。
直流域での測定によれば,絶縁無しの裸線を束ねただけの一般的なケーブルと比較し,
一本々を絶縁した導線を素線としてこれらを束ねた構造を有するリッツ線は,
素線間の接触放電によるノイズ発生は皆無かつ抵抗値も安定しております。
また単線によるよりも高周波特性が優れていることは,
伝送特性の周波数への依存度が下がることからも,
リッツ線を使う上での大きなメリットになります。
そして束ねる素線の径を適切に選べば,機械的安定性にも優れた取り扱いやすいものになります。
ただし末端処理に少しだけ手間が掛かりますが,そのことを除けば随分と優れたケーブルのようです。
かといって,箱の中ならぬ部屋の中を引き回して使いますので,
素線の径は細すぎても太すぎてもダメで,使い勝手を考えて程々にしておくのが良さそうです。
例えば,素線を細くすることにより仕上がりのしなやかさや周波特性の平坦化を追求しても,
機械的に安定なものにするための大袈裟な工夫が必要になってきて,狙いとは逆の結果となるようです。
一方,線単独での機械的安定性を求めて素線を太くしていくと,
表皮効果や浮遊容量などのため周波数特性が劣化してくるでしょうし,
その上束ねた際の仕上がりが頑丈に成り過ぎて使い難くなり,
場合によっては危険ですらあります。
さらに,直流抵抗値の低い周波数特性の平坦な中空構造で太めの導線を使うといった手もありそうですが,
特性インピーダンス値の方は百オーム程度にしか下がりません。
この特性インピーダンス値を十オーム程度に下げるには,
例えば外径と内径をほぼ同じにした様な同軸構造にするとか,
数十本のエナメル線を束ねた1本のリッツ線を均等に2本に分けて使うといった手もあるにしろ,
作るのが大変そうですし使い勝手も悪いような気がします。
これはもう,配線可能な程度の太さのケーブルを何本も並列接続して直流抵抗値を低くし,
かつ特性インピーダンス値十オーム以下を目指すなどという大袈裟なこともやめて,
スピーカケーブルによる影響を出来るだけ少なくするべく,
例えばケーブル長を波長の数十分の1にすれば良いだろうなんて事ではなく千分の1程度(100kHzだと内部配線込みで3m)になるよう,
メインアンプをスピーカの直ぐ側に配置し配線長を一挙に短縮するといった,
別の方策を採る方が簡単かつ手軽で近道かなというようなことになってしまいそうです。
このように,
素線の断面積や本数さらには構造等々スピーカケーブルとしての客観的特性に影響を及ぼす要素に事欠くことはありません。
さらには,一度でも測定したことのある方なら良くご存じのように,
スピーカ本体の受動的および能動的特性までもが千差万別にからみあってくることから,
答えが一つであるとは到底言えない状況でもあります。
結局,測定により検証できる項目に関してある程度までの許容範囲内に収まっているのであれば,
残りについては製作者の主観で決めてしまうのが良いように思います。
ちなみに私の使っているエナメル線の直径は以下の説明にある通りほんの少し太目になっております。
まず,直径が0.5ミリ程度のエナメル線を必要と思われる本数と長さだけ用意します。
これには一巻1キログラムのものを購入し使うのがお勧めでしょう。
素線の本数ですが,束ねたときの外観(包絡線)がなるべく円に近くなるよう,
3本とか7本にすることが考えられます。
ただし,束ねるようにしてから(例えば1センチあたり1回転程度)しっかり撚るかねじるかすると平均的には円形になることから,
実際の所は何本でも構わないと思います。
さてこのエナメル線の束の片方を机の脚などにしっかり留めてやります。
そしてもう一方の端をドライバの軸などに揃えて結わえ,ドライバの軸とは直角にして回しながらねじってやります。
ねじるか撚るかしながら時々しごいてやると仕上がりは綺麗に見えますが,あまり強くしごいてはいけません。
このようにしてリッツ線と呼ばれている撚り線を製作することができます。
ところでもう少しの工夫をして機械的なひずみを少なくしておきたい方は,
素線それぞれにスイベル(より戻しとも言います,釣具屋さんにて入手可)を付けてから撚るとか,
専用の工具を用意してやればより本格的なリッツ線を作ることもできるでしょう。
こうして作ったリッツ線を2組用意し,撚り対線(ツイステッド・ペア)ケーブルに仕上げて行きます。
それぞれを区別するためには,
スピーカ端子のプラス用もしくはマイナス用の目印を付けておくのが良いでしょう。
目印には,ビニールテープでも構いませんが,着色熱収縮チューブがお勧めです。
そして,この2組のケーブルを一方の端から始めて順次撚り合わせてまとめてやれば,
スピーカケーブル1本分の出来上がりです。
この場合のピッチは出来上がった際の見映えと使いや易さで決めれば良いと思います。
2−3センチで1回転程度といったところでしょうか。
また,撚り合わせる際の回転方向は全て同じにしておくのが無難なようです。
バイワイヤリングにするのであれば,このようにして作ったものをさらに2組用意し,
先ほどと同じ要領でさらにもう一度撚り合わせ,見た目が自分好みになるようまとめてやれば良いと考えております。
これは,
インダクタンス(L)とキャパシタンス(C)はリッツ線半径と線路間距離との比だけでほぼ決定し,
かつ往路と復路リッツ線がノイズ特性上有利な撚り合わせにより既に密着状態に近いことから,
ケーブル長の僅かな変化こそ在るものの,
L値とC値に対する撚り合わせ回数の影響は殆ど現れてこないためでもあります。
このことから,電気特性のひとつ特性インピーダンスをほぼ同じ値に保った状態で,
見映えや使い易さといった好みを反映させるような加工作業をすることができるのです。
ここまで見てきて,試してみようという気になってきた同好の士へのアドバイスとして,
エナメル線だと撚り合わせのピッチとは関係なく特性インピーダンスは100〜150オーム程度になること,
UVケーブルだとエナメル線より少し高めにはなるもののツィステッドペアと同程度になること,
スピーカの電気特性に近付けるには例えば10組を撚り合わせ並列接続するだけで10オーム程度に低く出来ること,
この撚り合わせによる特性インピーダンスの変化も無視出来ること,
そして撚り合わせにより外部からの影響の少なくなることを注記しておきます。
こうして出来上がったリッツ線をスピーカケーブルとして使うのですから,
エナメル線両端(だけ)の絶縁被覆を綺麗に取り除いておく必要があります。
そのためには半田メッキ処理が手頃な手段となります。
ところでこの程度の径であれば,半田食われによって導線が細くなるような心配は不要のようでした。
そこで,例えば40ワット程度の半田ごてを使い,
ありあわせの板などの上で1〜2センチの半田の玉を作りこれを利用してメッキ処理します。
熔けた半田の玉にエナメル線の先端を1分も入れてやれば,
エナメルが綺麗に溶けてきますので慣れてしまえばどなたでも簡単に半田メッキできるようです。
当然のことですが,熱伝導の良い圧着端子に差し込んでから半田ごてを当てるとか,
熱容量の大きい半田るつぼまたは加熱処理の不要な有機溶剤などを使うとかするとより簡単かつ素早く
半田メッキ作業をすることができるでしょう。
要は,導線の表面にあるエナメル被膜を取り除き,
安定に導通するようにしてやれば良いのです。
さらにその後で圧着端子などを用いてばらつかないようにまとめておけば随分と使い易くなるようです。
ところで,エナメル線の皮膜(一般にはポリウレタン樹脂)は比較的丈夫なので,
スピーカケーブル程度の用途であれば絶縁の心配は不要であり,
ピッチをさらに細かくしていっても大丈夫のようでした。
そして電流の往路と復路との線間距離が僅かなこともあって,
ピッチを細かくするにつれて静電容量結合や電磁誘導結合による外来電磁波(雑音)混入の軽減されてくることからも,
スピーカケーブルとしての見映えや使い勝手は良くなってくるような気がします。
でもエナメル線そのままだとピカピカ光ったりして目障りになるようなので,
簡単な被覆をしておくことも必要かと考えます。
ちなみに私は黒のナイロン網シースを被せております。
以上簡単なスピーカケーブル製作法について解説をしてみました。
さて,例えば,ここでもしあなたが運良く銀などのエナメル線を使うということになった場合には,
もう少し注意深く作業しなくてはなりません。
どういうことかと言うと,
銀入り半田などを用意して温度や作業時間などを管理しながら半田メッキ処理するとか,
溶剤を用いて被覆を除去するだけでなく末端処理などにも一工夫する必要があるからです。
でも普通のエナメル線を使う場合には,実際にはここに書いてあるより気楽に作業をしても構わないと思います。
それにしてもこのようなケーブルは,
当然のことではありますが,
各種法律・規制の関係から販売される可能性は皆無に近いと言っても良く,
自作するしか入手の方法は無いものと考えます。
かといって自作し試される場合について,
スピーカケーブル専用として使う限り事故の起きる可能性は限りなく低いものと思いますが,
万が一の事故に対する責は一切負いかねますので,
あくまでも自己責任でやっていただくことをお願いしておきます。
ところで,
このようなケーブルをどんな装置に組み込んで使っているのだろうかと気になってきましたでしょうか?
結果を得るまでの経過を楽しむことは趣味の重要な要素ですから,
このケーブルを組み込んでいる音出しの道具についても紹介しておくことにします。
まず,最初にメインアンプですが,自作のものと既製品とを各1台用意し,
この二つを季節に合わせる程度の周期で切り替えて使っております。
そして,エアコンなどを使うような気候の折りには既製品を,
静けさの中で音を楽しみたい時には自作品を使うといった風にしております。
自作品は3WAYコンデンサスピーカ用に設計製作したものですが,
相補型プッシュプル駆動段と相補型プッシュプル出力段からなるDCアンプで200ワット・ツインモノ,
既製品は少し手を加えてから木製ケースに収納したマッキントッシュ製300ワット2チャンネルの
パワーアンプです。
また,プリアンプは入力切り替えを省略することもできるアナログ加算器型の自作品を,
LPレコード再生システムとしてはリムドライブで点軸受の36cm径ターンテーブルと
ピックアップSPU−Aおよび専用アームRMA309と燐青銅ブロックのアームベース
そしてDC直結NF型イコライザをローズウッドとニャトウで作った台に組み込んで一体型にした重量級を,
CDプレーヤはSONY製CDP−X5000のDAC回路周辺に少し手を加えたものを使用しております。
既製品に手を加える際の基準は電気特性に裏付けされた好みの音といったところで,
上記パワーアンプに関しては回路そのものは変えずに音だけが自作アンプと同じになるよう部品交換してあります。
またCDプレーヤに関しては,
高周波回路や電源のバイパスコンデンサを別規格のものに交換するとか,
低周波アナログ回路に簡単な変更を加えるなどといった細工もしていますが,
その際には出力レベルを別のDAコンバータに揃えるようにして音色の比較や動作確認をしながら作業し,
外観や使い勝手は変えないようにしてあります。
この部品交換の際,
例えばコンデンサの場合には各種特性を5桁程度の精度(ESRはミリオーム単位)で測定して交換用のものとの比較検査を行い,
広帯域オシロスコープなどを用いて動作確認もした上で,
主観評価と客観評価とのバランスをとるようにしております。
このようなことをしていますと,
希にですが部品などの品質管理もかなり厳密に行われている,
いわゆる気合いの入った製品に出くわし驚かされる場合があります。
例えばマッキントッシュのパワーアンプがその一つで,
見かけが大したこと無いという理由だけで交換のため取り外したものをそれでもと念のため測定したところ,
外見とは不相応な良い部品のことが多くて,
前もって用意していた物では釣り合わなくなってしまうような事が何度も在りました。
これに対して,
見た目は立派なのに肝心の特性やその管理選別さらには組み立てまでもがいいかげんなモノの方をよく見かけることから,
この違いこそがブランドによる差なのかそれとも単に納品検査体制などの違いによるのだろうかと,
何度も感心しながら作業したことを思い出します。
一方,LPレコードプレーヤの方はオンリィワンを目指して気儘に製作したものなのでどんな音といった基準は無いのですが,
CDによる同一アルバムの音など軽く一蹴する程度の出来にはなっております(自画自賛)。
そういった次第ですので,内蔵イコライザへの連続通電を始めてから四半世紀を経た今日でも,
CDプレーヤは主としてBGM用にしか使っておりません。
そんなことは無いはずだ信じられない等と言う方へというわけではないのですが,
客観的な比較も兼ねて,LPとCDとによる再生信号のスペクトラムを実際に測定し,
その時間推移が分かるように順次並べて表示してみることにしました。
この結果は,ジャズファンお馴染みのザ・トリオが軽く流れるように演奏している曲中の約10秒間について,
6分の1秒おきにスペクトラムを測定し並べて表示したものです。
測定帯域はDCから100kHzまでとし,線型目盛の横軸左端がDC相当で右端が100kHz,
中央が50kHzになっており,
時間進行方向は画面下から真っ直ぐ上向きになっております。
ここで,
左よりの縦線は標本化周波数の約半分22kHzを示したものですが,
この結果から,LPの再生音には可聴帯域を超えて高周波成分の多く含まれていることが,
そしてCDには一切含まれていないことが分かります。
なおこの図で22kHzを大きく超えてスペクトラム成分の広がりが見られる部分は,
大小の磨き上げた玉がまるで飛び跳ねてでもいるかのようなピアノの音に対応しております。
そしてここには示していませんが,
より微弱なものも含めるとさらに広範な広がりを見せていることからも,
演奏している楽器の質は勿論のこと雰囲気の違いまでもがこの高周波スペクトラムの差として現れている様な気がしております。
ちなみに,
スペクトラム1本分の測定時間を秒単位以上の長さにするとか何本かをまとめるような平均処理をすると,
楽音と騒音との区別すら出来ない音楽のリアルタイムとか楽譜とは無縁な時間軸の世界を見ていることになるので,
音を楽しむ上でも大切な時間進行に伴う情景の変化を示すもの一切が消え失せてしまい,
ピアノのタッチの差が紡ぎ出す瞬間の美の連なりといったようなことは観測できなくなります。
次に,このような高周波成分がLPレコードプレーヤシステム固有のものではないことを確かめるべく,
当時2トラック38センチメートル毎秒で生録音したテープの再生出力についても調べてみました。
その結果,演奏者はもちろん楽器や曲目が異なっているにもかかわらず,
テープによる再生信号のスペクトラムもLPの場合と同様の広がりを示し,
また出てくる音の雰囲気もLPを聴いている時と同じであることが確認できました。
これらのことから,LPレコードというものは,
機械的な過渡応答により多少のスペクトラム成分が加わることを考慮したとしても,
マスターテープの信号をかなり忠実に記録保持していると考えることができそうです。
しかしこれが通常のCDプレーヤの場合には,
内部回路に手を加える前であろうが後であろうが,
強奏音が鋭くかつ心地よく耳の奥にまで共鳴しながら届いてくるような可干渉性を示すようになってこようが,
そして主観的には劇的な音質向上を果たしLPの音にかなり近づいてきたと思えたとしても,
客観的にはここに示した結果からも明らかなように,
何回測定しても22kHz以上の周波数成分が現れてくるようなことは有りませんでした。
しかしこのことは,回路が正しく動作している限り理論的には起きるはずもないことであり,
至極当たり前のことでしかないのです。
そして,こんなところも微妙な音の違いとして現れているのかなと思ってみたり,
具体的に計算し作図して比較すれば誰にでも直ぐ分かることではあるのですが,
標本化定理が示している必要条件を満たすべく入力信号の周波数を標本化周波数の2分の1以下に抑えるだけでは不充分で,
例えば4分の1以下にしてやらないと入力信号の位相と振幅の区別がまるでおぼつかない,
高域成分の記録・再生が苦手な規格の特徴なのかなと考えてみたりしているところです
(2分の1だとピーク誤差が100パーセントすなわち位相差によっては波形を記録できなくなる場合があるのに対し,8分の1以下にするとこれなら充分かなと思える程に波形の再現性が向上することから,
標本化周波数192kHzの必然性を感じているところでもあります...そうまでしても20kHzの信号に関するピーク誤差が8パーセント程度までにしか下がらないのは十分条件の敷居が高い所為でしょうね)。
こういった結果に気を良くしたからということではありませんが,
CDというかパッケージ形態をしたメディアの命運や如何にといったここ最近の情勢も鑑みて,
パッケージメディア大輪の華!?LPレコードをもっと気軽に楽しめるようにと,
家庭用にしては随分と頑丈な作りの
ガラードとか
トーレンスの古いメカを入手・整備し,
可搬型のプレーヤシステムを組み立てる事となりました。
写真のターンテーブル駆動機構はベルト・アイドラ・ドライブで点軸受30センチ径のトーレンスTD124MkIIとアイドラ・ドライブで面軸受30センチ径のガラード401ですが,
これらを持ち運びが楽なよう桐で作った軽量級の台に載せ,
アクティブ・フィルタ2個を直列接続して構成した電源一体型イコライザも組み込み,
手軽に利用できるようなものにしております。
このトーレンスのメカニズムは電源周波数50ヘルツ又は60ヘルツへの切り替えがとても簡単だったのですが,
一方,
ガラードの方は小さなプーリと大きなターンテーブルを電源周波数に合わせて丸ごと交換するような作りになっています。
私の入手したのは50ヘルツ用だったことから,
交換用ターンテーブルを探するよりはかなり近道と考え,
電力増幅用ICを用いたウィーンブリッジ回路による50ヘルツの電源を製作し,
このガラード専用電源との組み合わせで暫く使っておりました
(この程度の規模ですと,
事前設計して必要な仕様の部品を揃えこれらを組み合わせるだけで即動作します;
部品の入手も含め計算機が手軽に使えることから簡単になったものです;
周波数と振幅を微調整するための抵抗を数個ですが追加するだけで完成しました)。
しかし,プレーヤ・システムに内蔵するべく,
トロイダル型とはいえやや小さ目の電源トランスと出力トランスを用いたことによる銅損の増加も手伝って,
全体で30ワットとモータ単独の場合と較べて2.5倍もの電力を消費する低効率なシステムになってしまいました。
そこで現在は,
長期使用と省エネのことも考慮してこの交流電源の使用をやめ,
プーリを60ヘルツ用のものに交換することで電源周波数の違いに対処するようにしております。
そしてまた,最近の発光ダイオードはどの色でも随分と明るく効率も良くなっているようなので,
100ヘルツのパルス発生器を製作して,
これでターンテーブル外周のストロボ模様を照らし出すようにしてみました。
水晶発振子を用いたこのストロボ発光装置の消費電力はネオン管並に低く抑えてあり,
光源に用いた発光ダイオードの色は,今更オレンジにすることも無かろうと考えて,
暗くした赤にやや明るい緑と青を組み合わせたものにしてあります。
一方,
電源スイッチ周辺の(赤色,緑色,黄色)発光ダイオードは,
ターンテーブルの内部機構が電磁石により制御されていた頃の名残りです。
この電子制御を採用したガラード401LOGICは,動作中に回転数の切り替えが出来るようになっていましたが,
今となっては不必要な機能と考え,
省エネなどのことも考慮してありきたりの手動方式に戻してあります。
ところでここで用いたフィルタ2段
によるイコライザは周波数特性を変えずに利得だけを変えることが出来ます。
主にチタン製パイプ・アームのSME3009IIIを使っていてこれには充分満足しているものの,
取り付けているカートリッジのカンチレバーが長い所為か僅かに音の薄くなる傾向があり,
レコードによっては聴いた後の満足度があと少し足りないように感じることもありました。
ですので機会を見て,これをカンチレバーの短い例えばデッカのものに替えてみようかとも考えたのですが,
それでは少し安直に過ぎるのではと思い直し,
イコライザの利得を調整するなどして満足度を上げるよう試みているところでもあります。
今現在は,
常用のカートリッジ,
シュアーV15IIIなどと組み合わせた際の出力が1ボルト前後となるよう270倍程度(約49dB)に設定しているのですが,
利得を変えるだけで微妙にですが出てくる音の雰囲気も変わることから,
場合によっては別物のように鳴ってくれるのも面白いところです。
当たり前のことではありますが,
アナログ機器は少しのことで印象の異なる鳴り方をするもののようです。
こういったことをしているうちに,
以前から興味のあったグリース軸受けガラード301によるLPレコード再生音や,
さらに加えてフェアチャイルドのモノーラルMCピックアップ220Aの音も聴いてみたくなってきました。
さて最後にスピーカの方ですが,
かってはSTAXのコンデンサ型ESS4Aを,
ここ最近はB&Wのトールボーイ型
SS30を自作の木製台(厚さ2センチの御影石2段重ね入り)に載せ鳴らしております。
そして,試した結果悪くはならなかったのでそのままバイワイヤリング接続にし,
再生音量の方は少し大き目の話し声程度までとして楽しんでおります。
また希にですがより大きな音で鳴らしたくなった場合には,
自作アンプ(トランジスタ式,最大出力 1400V p-p)にSTAXのイア・スピーカを組み合わせたものを使い,
静かに楽しむようにしております。
ところで,SS30の内部配線がかなり太い銀の単線だったことから,
最初はスピーカケーブルもそうしてみようかなとも考えたのですが,
それでは何となく芸が無いような気がしたのと,かなり高価だったことと,
さらには太い線を箱の中ならぬ部屋の中で使うのはその固さの点から危険な感じもしたことから,
このようなケーブルを製作し愛用するようになった次第です。
えっ!? 高純度・高品質・貴金属のリッツ線だとどんなだろうか?! ですって...どうぞお好きにしてください。
でも試した結果が上首尾の場合には私へのご一報もどうぞお忘れなく!
なんでも...良い音のする均質な鐘を鋳るのには地金に金とか銀を沢山混ぜるのが昔からの常識だったとか...かなり期待できるかも知れません。
ところでこれも少し違う話の様な気もしますが,
PCMレコーダのデジタル回路基板などのバイパスコンデンサ数十個を全て金電極のものと入れ替えてから生録音に供した事があります
(米国にはこの程度のパーツだと湯水の如く消費する組織があるため,
日本でも何かの拍子に新品を入手できたりします;
艦載パラボラアンテナの性能を出すべく本体まで白金製にしていたそうですが,
こちらは安易に廃棄しないらしくてまだ見たことはありません)。
その時のことですが,名手の手になるギター演奏とその再生音との差が視覚的なものでしかなかったことから,
演奏者当人も含めその場に居合わせた皆で目を丸くした経験があるということを書き添えて,
デジタル録音を否定しているのではないことを注記しておきます。
さて,このとても安上がりなスピーカ専用ケーブルの音ですが,
価格比数百倍の純銀リッツ線スピーカケーブルを基準にして聴き比べしても何ら遜色のない感じがすることから,
とても気に入って使っております。
また手軽に作ることができるということもあって,ここに紹介した次第です。
リッツ線(英語: Litz-wire, 独語: litzendraht)のことをさらに詳しく知りたい方は,
例えば "Fields and Waves in Communications Electronics",
Ramo, Whinnery and Van Duzer, Wiley, 1965, page 289 等を参照してください。
またホームページに記載されている資料からでも,
オーディオ周波数帯域での
表皮効果(skin-effect)の影響が意外に大きいのだということを
グラフなどで確認することもできます。
これらの説明に出てくる式は一見複雑そうに見えますが,
リッツ線と単線との周波数特性の比較図もあり,
単線と同軸および平行2線との比較計算もしてありますので,
身近な例と比べながら眺めるのも面白いかも知れません。
リッツ線の現物についてですが,
例えば,高性能CRTディスプレイとか3管プロジェクタの偏向コイルなどに使われているものを見ることができました。
このようなラスター方式による表示装置では本数の増えた水平走査線の精度を保つため,
偏向コイルの抵抗値が表皮効果による温度上昇のため大きく変動したりしない様,
そして数十キロヘルツの鋸歯状波を加えた場合でも電流波形の歪が増えたりすることの無い様リッツ線を使っています。
ここ最近ですと,電子レンジ用のスィッチング電源トランスに利用されているものを見ることができます。
これらのものと比較し,
スピーカケーブル程度のことで何て大袈裟なことをと思われたことでしょうが,
スピーカにより再生する信号の周波数帯域は10オクターブ以上もあり周波数軸を対数にして見ると明らかなように随分と広いこと,
さらには各種電気信号の中でも音楽信号のダイナミックレンジはかなり広いことから,
ケーブルが原因で電圧・電流波形が歪むようなことは避けねばなりません。
またこの他に,機械的振動に由来する各種の(まさに)雑音とか,
さらには接続部における熱起電力などの影響も出てくることでしょうから,
たかがケーブルといえども音に影響する要因に事欠きません。
このようなことからこれを客観的に捉えようとするためには,
多くの考慮すべき対象を主観に偏ったつぎはぎにしないよう,
色々と工夫・検討する必要がありそうです。
リボン型およびコーン型スピーカの電気特性
コンデンサ型および電磁型スピーカの電気特性
JBL D123 スピーカーシステムの電気特性
ウィーンブリッジ発振回路を用いた交流電源
ガラード301グリース軸受
フェアチャイルド220A
プリアンプの製作
トライパスTA2020
測定機のコレクション
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